2017年05月01日

玄関にまつわるお話

ふだん、なにげなく使う「玄関」という言葉。

この意味、ご存じですか??


意味ってなんだよ、
家の玄関のことだろ



という読者からのツッコミが聞こえてきそうですが(笑)



玄関(げん-かん)

1.建物の正面の入口。

2.玄妙な道に入る関門。
 禅学に入るいとぐち。
 転じて、禅寺の門。
 寺の書院の昇降口。



玄というのは、奥が深い悟りの境地。
関というのは、入口、という意味。



玄関っていうのは、仏教用語で。


玄関とは・・・
悟りの境地に入る神聖な入口。





禅宗のお寺さんなどでは、
玄関とは、今でもこの意味なのだそうで。




もともと玄関は「お寺の門」をさすものだったのですが。

これが武家屋敷にも取り入れられ、

そのうち、豪商の家などにも「玄関」がつくられるようになっていきました。


そう・・・つまり・・・

日本の住宅では、
明治初期のころまで、
庶民の家には「玄関」はなかったのです。




ほら、時代劇なんかで庶民の家の長屋なんかがあるでしょ?

あれには玄関なんかないんです、いきなり部屋(ただし土間)です。

農家の家もそうで、戸を開けたら部屋(土間)です。




明治期の夏目漱石の小説で、「ぼっちゃん」という作品がありますが。

このなかで、主人公のぼっちゃんの気性が好きな、おばあさん(キヨ)が登場します。

キヨは言うのです、

『ぼっちゃんは気持ちのまっすぐなひとだから、
 将来はきっと出世なさって玄関のある家にお住まいになるでしょう』


注)このセリフ、記憶をたどって書いてるので、一言一句正しいわけではりません(汗)
キヨはこういうセリフをぼっちゃんに、言っています。
(ニュアンスでご理解ください)


さて。
キヨが言っている意味、分かりますか??


そう、明治期までは、庶民の家には玄関はなく、

立身出世を果たしたお金持ちだけが「玄関のある家」に住んでいたので。



だからキヨは上記のように言ったのです。





玄関のある家は庶民の高値の花、だったのです。


大正から昭和にかけて。

庶民の家にも「玄関」つきが主流になっていきました。



(参考画像:リクシルさんより)



僕が思うに。

玄関というのは、日本の住宅の象徴であるように思っています。

なぜなら、
日本人は
「靴を脱いで」
家に入る文化を
持っているからです。



玄関があって、はじめて靴を脱ぐことができる。



寒冷地の長野では、エントランスクロークが人気。

靴だけでなく、パイプをかければアウター(上着)もかけられる。

小さなお子さんのいる家庭では、ベビーカーも収納できる。

雪が降る冬季には、雪かきのスコップやシャベルも収納できるし、

BBQなどのアウトドアがご趣味の方はそういうものもしまえる。


できれば、靴のまま入れる「土間」仕上げが便利。




よく考えたら、
このエントランスクローク(玄関脇の収納)って・・・
ヨコ文字になってるだけで、
なんのことはない、
昔の日本の庶民の住まいの
「土間」の名残なのかもしれません。





こちらの写真は、今から12年前、
空間工房の記念すべき一棟目のT邸。




T邸には土間があります。
土間でくつろぐT様。


土間のある家、って便利ですよ。


  


Posted by おかもと社長 at 14:06Comments(0)家づくり設計